2014年5月9日金曜日

『おおきな木』 シェル・シルヴァスタイン  村上春樹訳

『おおきな木』
シェル・シルヴァスタイン

村上春樹訳



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あるところに、いっぽんの木がありました。

 その木は ひとりの少年のことが だいすきでした。

 少年はまいにち その木の下にやってきました。

 はっぱを いっぱいあつめ、はっぱで かんむりをつくり、木のぼりをし、えだにぶるさがってあそびました。

 そしてりんごをたべました。(この木は、リンゴの木だったのですね)

 「かくれんぼ」をしたり、くたびれると こかげでねむり、その木がだいすきでした。

 だれよりもなによりも、木はしあわせでした。

 でもじかんがながれます。(少年は成長して青年になります)

 少年はだんだんおおきくなっていきます。(かのじょができます)

 木がひとりぼっちになることがおおくなります。

 このあと少年は3回、木のところにやってきて、まずお金、次に家、さいごにとおくにたびするための船をほしがります。

木は、まずリンゴ、次に枝、さいごにみきを少年にあたえます。そのたびに、木はしあわせになります。

 ずいぶんながいじかんがながれ、少年はもどってきました。

木がなにもないことのいいわけをすると、少年はなにもできなくなったとこたえます。

 「ぼくはもう、とくになにもひつようとはしない」と少年はいいました。

 「こしをおろしてやすめる、しずかなばしょがあればそれでいいんだ。ずいぶんつかれてしまった」

 「それなら」と木はいいました。

そして できるだけしゃんと、まっすぐにからだをのばしました。

 「ふるい切りかぶなら、こしをおろして やすむにはぴったりよ。 いらっしゃい、ぼうや、わたしにおすわりなさい。 すわって、ゆっくりおやすみなさい」

 少年はそこにこしをおろしました。

 それで木はしあわせでした。

 おしまい




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