『おおきな木』
シェル・シルヴァスタイン
村上春樹訳
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あるところに、いっぽんの木がありました。
その木は ひとりの少年のことが だいすきでした。
少年はまいにち その木の下にやってきました。
はっぱを いっぱいあつめ、はっぱで かんむりをつくり、木のぼりをし、えだにぶるさがってあそびました。
そしてりんごをたべました。(この木は、リンゴの木だったのですね)
「かくれんぼ」をしたり、くたびれると こかげでねむり、その木がだいすきでした。
だれよりもなによりも、木はしあわせでした。
でもじかんがながれます。(少年は成長して青年になります)
少年はだんだんおおきくなっていきます。(かのじょができます)
木がひとりぼっちになることがおおくなります。
このあと少年は3回、木のところにやってきて、まずお金、次に家、さいごにとおくにたびするための船をほしがります。
木は、まずリンゴ、次に枝、さいごにみきを少年にあたえます。そのたびに、木はしあわせになります。
ずいぶんながいじかんがながれ、少年はもどってきました。
木がなにもないことのいいわけをすると、少年はなにもできなくなったとこたえます。
「ぼくはもう、とくになにもひつようとはしない」と少年はいいました。
「こしをおろしてやすめる、しずかなばしょがあればそれでいいんだ。ずいぶんつかれてしまった」
「それなら」と木はいいました。
そして できるだけしゃんと、まっすぐにからだをのばしました。
「ふるい切りかぶなら、こしをおろして やすむにはぴったりよ。 いらっしゃい、ぼうや、わたしにおすわりなさい。 すわって、ゆっくりおやすみなさい」
少年はそこにこしをおろしました。
それで木はしあわせでした。
おしまい
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