2014年5月2日金曜日

『僕は馬鹿になった。』 ビートたけし









『僕は馬鹿になった。』 ビートたけし



騙されるな

人は何か一つくらい誇れるものを持っている
何でもいい、それを見つけなさい
勉強が駄目だったら、運動がある
両方駄目だったら、君には優しさがある
夢をもて、目的をもて、やれば出来る
こんな言葉に騙されるな、何も無くていいんだ
人は生まれて、生きて、死ぬ
これだけでたいしたもんだ


友達

困った時、助けてくれたり
自分の事のように心配して
相談に乗ってくれるこんな友人が欲しい
馬鹿野郎、
友達が欲しかったら
困った時助けてやり
相談に乗り
心配してやる事だ
そして相手に何も期待しない事
これが友達を作る秘訣だ


生きていくこと

我が子がライオンに食われるのを
遠くで、悲しく見ている、ヌーの母親
乳房をしゃぶる事もなく、死んでいく我が子を
力なく、見つめる母親
ボスの子供たちを殺して、自分の子供を作ろうとする新ボス
それに応えるメス猿
子供が孵化し旅立つのを見届けるまで
じっと見守り、死んでいく蛸
命を育もことは
残酷な殺戮と自己犠牲の連続である





進歩

君が僕が去って、もう何日が過ぎたろう
寂しさから、僕はいろいろなものに興味を持つようになった
今までまるで興味のなかった、絵画、小説、音楽、映画、など
前より僕は頭がよくなったような気がする
君のおかげかな
でも君が帰ってくるなら、また馬鹿になってもいい


懺悔

母が悲しげに僕を見て、そして泣いた
あの時、僕が母に言ったこと
いつまでも僕を苦しめる
何を言ったか
決して、他人には言えない


出会い

彼女と知り合ったのは、アルバイト先の社員食堂だった
これ、食べませんか、と俺にサンドウィッチをくれた
それが彼女との出会いだった
その後、よく彼女に其の時のことで詰め寄る俺

なんで俺にくれた?
残すともったいないと思った

本当は?
野菜サンドのレタス嫌いだった

本当は?
ちょっと気があった

他の男に気がなかったの?
あなたしか興味なかった

本当は?
もっと素敵な人、いたけど、あなたくらいが適当かと

俺がデートに誘うと思った?
全然期待していなかった

本当は?
男は食い物に弱いから、すぐTELしてくると思った

3回目のデートの時、何かされると思った?
全然、わたしそういうこと疎いから

本当は?
公園の方に行くから、帰り道と違うんで、
そろそろ来るなと思った
彼女は俺の隣で、すやすや寝ている




兄弟

兄ちゃんが、僕を上野に映画を見に連れて行ってくれた
初めて見た外国の映画は何か悲しかった
ラーメンを食べ、喫茶店でアイスコーヒーを飲んだ
兄ちゃんが、後から入ってきた、タバコ吸っている人達に
殴られて、お金を取られた
帰りのバス代が一人分しかなく
兄ちゃんが僕をバスに押し込もうとした
僕はバスから飛び降りた
兄ちゃんと歩いて帰った
先を歩く兄ちゃんの背中が揺れていた
僕も泣きながら歩いた


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